(質問)s軌道もp軌道も左右対称なのに、両者を混成してできるsp3混成軌道などはどうして非対称な形をしているのか?(化学結合論、量子化学)

(回答)原子核の回りの電子についてSchroedingerの波動方程式を解くと、s軌道やp軌道に対応する解(位置の関数なので波動関数という)Φが得られる。これを図示すると下図左のようになる。
    
   2s       2p       各軌道の電子雲の図
模様が違うのは、波でたとえると位相が違うことを表している。
(以下は少し横道だが重要)位相の違いは、数学的には符号(+と−)の違いとして現れる。したがってこの符号は電荷の正負などとは無関係であるから誤解しないように。Φの値そのものには物理学的な意味はないが、これを2乗した関数(Φ2)は、この軌道に電子が入った場合の電子密度(より正確には電子の存在確率)と対応する(2乗するので、どの位置でも当然正の値となる)。これを図示したのがテキストの各軌道の電子雲の図(上図右)である。
 sp3混成軌道の波動関数は、上の2sと2pを、中心(原子核の位置)を一致させて、1:3の割合で混ぜ合わせたようなものと(近似的に)考えていい。
     
そうすると、符号の同じ部分(上図では右半分)では足し合わせて大きな値になり、符号が逆の部分(上図では左半分)では打ち消し合って小さな値になる(下図左)。
   
  sp3混成軌道の波動関数の図       sp3混成軌道の電子雲の図
波でたとえると、2つの波が同じ位相でぶつかるとより大きな波になり、逆の位相でぶつかると打ち消し合って小さな波になることに対応する。
 このsp3混成軌道の波動関数を2乗すれば電子の存在確率が得られるが、それを図示すると上図右のようになる。これがテキストに載っているsp3混成軌道の電子雲の図である。

 sp2混成軌道およびsp混成軌道の拡がりの様子は、上で「混ぜ合わせ」る割合を1:2あるいは1:1に変えたと考えると、sp3混成軌道の場合との違いが想像できる。