5.官能基とその性質

1.(1) 無極性分子  (2) 極性分子  (4) 無極性分子
(注意)(3) はイオン性物質なので、この分類にはあてはまらない(第2回2.参照)

2.(1) 略
   (ポイント)
(2) (a) C-OとC-N、H-OとH-Nの極性の大きさの違いに注目。
(3) (c) 2本のCl-C結合の極性の方向は、C=Oと逆向きである点に注目。
(4) (c) C-OとC=Oの極性の大きさに注目。

3.(1) (a) 第一級アミン  (b) 第二級アルコール  (c) 第二級アミン (d) 第一級アルコール
(e) 第四級アンモニウム塩  (f) 第三級アミン  (g) 第三級アルコール
(2) (f) ((e) も水素結合はできないが、分子性物質ではないので考慮しない)

4.(*は「有機化学命名法IUPAC勧告2013(2013勧告)」に基づく推奨名(PIN,Preferred IUPAC Name)(以下同じ)。現在、日本化学会は、「従来の1979規則、1993規則、および2013勧告のいずれに従ってもよい」としている。)
  (a) 2-プロパンアミン(イソプロピルアミン)、*プロパン-2-アミン
  (b) 2-プロパノール、*プロパン-2-オール
  (c) N-メチルイソペンチルアミン(N-メチル-3-メチルブチルアミン、N-メチル-3-メチルブタンアミン)、*N,3-ジメチルブタン-1-アミン
  (d) 2-メチル-1-プロパノール、*2-メチルプロパン-1-オール
  (e) 塩化テトラエチルアンモニウム(tetraethylammonium chloride)、*塩化N,N,N-トリエチルエタンアンモニウム 
  (f) N,N-ジメチルアニリン、*(同じ)
  (g) 2-フェニル-2-プロパノール、*2-フェニルプロパン-2-オール

(a) で「2-プロピルアミン」は誤り。(CH3)2CH-は「1-メチルエチル基」(慣用名は「イソプロピル基」)であり、「2-プロピル基」ではないから。
(b) で「2-プロピルアルコール」「イソプロパノール」は誤り。前者は(a)と同じ理由から。後者は、「イソプロパン」という炭化水素がないから(命名法の誤用)。「イソプロピルアルコール」は慣用名としては正しいが、IUPACは使用を推奨していない。

5.(1)(2)

6.(ポイント)水素結合による会合に言及すること。

7.(1) -1 ×  (2) 1  (3) 1.5  (4) 5  (5) -0.5 ×  (6) -1 ×

 ただし、アンモニウム塩などのような配位化合物の場合には、IHD が負になる
ことがある。上の場合には次のような例がある。

(1) CH3O+H−CH2CH2CH2O+H−CH3  (5) C6H13-NH3+

これを答えても正解になる。
 「構造異性体のまとめ」で説明したように、各化学式と合う構造は多数存在す
る。ここではそのうち一つを答えればいい。解答例はこのファイルの2.を参照。

8.(1) O: 100-(42.87+2.40+16.66) = 38.07

相対質量から原子数の比(原子のモル比)を求める。

C: 42.87/12.01 = 3.57
H: 2.40/1.008 = 2.38
N: 16.66/14.01 = 1.19
O: 38.07/16.00 = 2.38

簡単な整数比を得るために、まず最も小さなものを1と仮定する。

C: 3.57/1.19 = 3
H: 2.38/1.19 = 2
N: 1
O: 2.38/1.19 = 2

 C3H2NO2

もし整数からかけ離れた数字が現れた場合には、それが整数に近づくようにすべてを整数倍する。

(2) 分子式は(C3H2NO2)n となるはず
組成式の式量は12.01×3+1.008×2+14.01+16.00×2 = 84.06
84.06×2=168.12 が条件に合う。分子式は(C3H2NO2)2 = C6H4N2O4

(3) 分子式よりIHD = 6。ベンゼン環はIHD = 4、ニトロ基(-NO2)はIHD = 1に対応する。考えられる構造はジニトロベンゼンの位置異性体(o-、m-、p-)。構造式は このファイルの4.を参照。

9.(1) (c) < (a) < (b)  (2) (c) < (b) < (a)

10.(1) (a) < (b) < (c) (2) (c) < (b) < (a)

11.下図の11 を参照。

12.下図の12 を参照。

     

 重要:酸性(塩基性)の強さを比較するときは、共役塩基(塩基)非共有電子対の非局在化の程度を比較する。非局在化しているほど塩基性は弱い(共役酸の酸性は強い)。言葉だけで違いを説明することは難しいので、化学式を示しながら説明するのがよい。

13.(1) (a)を参照  (2) (b) を参照

( )で囲んだ構造は不安定であり、下に示した反応で速やかに他の物質に変化する。

(b) にはさらに CH3-CH=CH-OOH、CH2=C(OOH)-CH3 が考えられる。

14.(a) C: 57.66%  H: 11.61%  O: 30.72%  IHD = 0
(b) C: 55.78%  H: 11.70%  N: 32.52%  IHD = 1
(c) C: 45.56%  H: 3.82%  O: 30.34%  S: 20.27%  IHD = 4
(d) C: 52.35%  H: 11.72%  N: 10.18%  Cl: 25.75%  IHD = -1

構造式の解答はこのファイルの3.を参照。

Q.質問への回答

(Q) 8.(1) に関連して、C4H6の異性体の一つ、のIUPAC名を教えて下さい。
(A) bicyclo[1.1.0]butane(ビシクロ[1.1.0]ブタン)です。
 このように、二つの環が一本以上の結合を共有している(縮環)化合物を、ビシクロ化合物といいます。環を構成する「鎖」をbridge(架橋部)といい、3つのbridgeが集まっている原子をbridgehead(橋頭位)といいます。以下に母核の名前のつけ方を簡単に説明します。まず、冒頭に「ビシクロ」とつけます(脂環式化合物の「シクロ」と同じ要領)。次に、各bridgeを構成する原子数を大きい方から順に"."(ピリオド)でつないで、[  ](かぎ括弧)の中に入れます。最後に環を構成する原子数に対応する炭化水素名をつけます。不飽和結合や他の置換基・官能基がある場合の取扱いも通常の命名法と同じですが、位置番号の付け方には縮環化合物に特有の規則がありますので、詳しくは命名法の参考書を参照して下さい。

(Q) カルボン酸のカルボンはどういう意味か?
(A) カルボン酸(R-COOH)は英語では carboxylic acid です。英語の carbon(炭素)と起源は同じでしょうが,「カルボン酸」は英語の carbon に由来する言葉ではありません。「カルボン酸」はドイツ語ではCarbonsaeuren (または Karbonsaeuren)と呼ばれます("ae" は"a"+"‥"(ウムラウト)の代用) 。saeurenはsaeure (酸)の複数形です。江戸末期〜明治期の化学はドイツやオランダの影響が大きかったので,carbonの部分は字訳して「カルボン酸」と訳したものが定着したと思われます。
 carbon を形容詞化すると carbonic になるからといって,「カルボン酸」を何も調べずに英訳すると carbonic acid になってしまいますが,これは「炭酸」(H2CO3)の意味であり,誤訳になります。ちなみに「炭酸」はドイツ語では Kohlensaeure であり,Kohlenstoff(炭素)に由来する酸という言葉の作りは日本語と共通です。
 これらの言葉の源になる Kohle はドイツ語で「石炭」のことです。だからといって, Kohlensaeure を「石炭酸」と和訳してしまうと,石炭酸は日本語では「フェノール」の慣用名ですので,これまた誤訳になってしまいます。化学に限らず,専門用語を翻訳するときには逐語訳に頼らず,本来の意味をよく調べてから訳語を探すことが誤訳を防ぐために大切です。
 さて,ドイツ後の Karbon は何の意味だと思いますか?調べてみるときっと意表を突かれると思います。