中和反応以外に、酸や塩基の主な役割は、そのままでは反応しにくい反応物や化学種を活性化することである。
酸の働き |
酸、特にH+の反応は例外なく速く、速やかに平衡に達する。酸があるときにはその結合位置、すなわちローンペアをもつ原子に注目する。 |
(1.1)酸はよい脱離基を生み出す。
(例)ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基はあまりよい脱離基ではないが、酸性下でH+が結合すると、よい脱離基になる。
(1.2)酸はよい求電子種を生み出す。
(例)芳香族求電子置換反応の求電子種は強いプロトン酸やルイス酸により生み出される。
(1.3)酸は反応物を活性化させる。
(例)カルボニル化合物では、H+が酸素に結合し、カルボニル炭素への求核種の反応が起こりやすくなる(カルボニル基の「立ち上がり」ということがある)。
塩基の働き |
塩基がH+と結合する反応もほとんどの場合は速く、速やかに平衡に達する(ほとんど唯一の例外はE2反応で、強塩基によるH+の引き抜きが律速段階である)。塩基があるときには酸性を示す水素に注目する。 |
(1.4)塩基はよい求核種を生み出す。
(例)カルボニル化合物のα炭素に結合している水素は、強塩基によって引き抜かれて、求核種であるエノラート・アニオンが生じる。