反応しそうな場所が2ヶ所以上考えられる場合には、どの場所での反応が実際に起こりそうかを判断する必要がある。これには、反応の進行に応じて、次の3つの基準がある。
化学種の反応中心の原子と、反応物の反応しそうな原子との間の結合の、結合エネルギーが大きいほど化学種が結合するのに有利。 |
C-C >> N-N > O-O
C=O >> C=C ≒ C=N
C-O ≒ C-C > C-N (> N-O)
H-O > H-C > H-N > C-C
C-F > (C-H) >> C-Cl > C-Br > C-I
C-Cl >> N-Cl ≒ O-Cl
(例)ハロゲンや窒素原子が中心にある求電子種は、陰性の窒素原子や酸素原子ではなく、π電子系の炭素原子に接近する。
イオン性反応では、電子の余っている場所から、不足している場所への電子の流れが必ず起こる。この流れがスムーズで、安定な遷移状態または中間体を経由しているほど、反応は容易に進行する。 |
(例)E2反応
安定そうな中間体を生じても、その後にスムーズな電子の流れが望めない場合には、反応はその方向には進行しない(反応の袋小路)。 このような場合には別の中間体からの反応の可能性を検討する。 |
(例)酸アミドの酸性下での反応では、アミド窒素へのプロトン化が起こりやすそうだが、プロトン化した中間体からは、電子がスムーズに流れそうな経路が見つからない。一方、カルボニル酸素にプロトン化すると、炭素原子上の正電荷が増加し、求核試薬の攻撃が起こりやすくなる。
安定な生成物を与える反応ほど起こりやすい。不安定な生成物は、いったん生成したとしても、逆反応で原料に戻ったり、さらに次の反応を起こして、より安定な生成物へと変化する。 |
(例)ケト−エノール互変異性では,ケト形のほうがエノール形より安定である。
(例)アルデヒドやケトンとアルコールとの酸性下の反応では、ヘミアセタールが生成しそうに見える。しかし、ヘミアセタールはあまり安定でないために、より安定な原料またはアセタールへとさらに変化する。