2017年4月10日(第1回)物質(単体と化合物)の分類

 下には、今年出た誤答をリストアップし、正しい分類に整理しました。分類ごとに五十音順にならべています。各分類には、まず2012年〜2016年の間は現れず、今年現れた誤答を記し、次いで2012年以降に現れたことがあり、今年も現れた誤答を示しています。
 各分類内で「混合物」とあるのは、その分類に該当する物質からなる混合物の名前である場合、「集合名」とあるのは、個々の物質ではなく同種の物質の総称名である場合をさします。
 この他に、正しく分類できた物質が多数あります。私達の日常生活がいかに多くの種類の物質で支えられているかが、如実に理解できるのではないでしょうか。
 自分の挙げた物質の分類が違っていた場合は、正しくはどこに分類されているか、探してみてください。

有機物:分子性物質  イオン性物質  高分子
無機物:金属  分子性物質  イオン性物質  高分子

分類に関する質問への回答


 まず、分類以前に、物質名ではない誤答(NG語)を、理由ごとにまとめて掲載します。

物体名:回答の対象にならないもの。「物体」と「物質」の区別は、化学以前の自然の理解の基礎の基礎です。学校の試験には出なくても、就職試験では出題される可能性のある一般常識です。事前の自己学習が功を奏したのか、今年は例年にくらべて少なかったようです。
スチールウール,綿、
(昨年までも現れたもの) 

集合名または状態名: 物質の名前ではないので回答の対象にはなりません。
シリカガラス,ネクロトキシン,微粒酸化ケイ素,ポリマー
(昨年までも現れたもの)ガラス、

品名:物質から構成されているものもありますが、機能と関係している名称であり、物質名ではありません。
 
カシミヤ,果糖ブドウ糖液糖,高吸収性高分子,香料,洗剤,(軽質)流動パラフィン,
(昨年までも現れたもの)ゴム(ラバー)、シリカゲル,プラスチック(合成樹脂) 、

誤った名称、不完全な物質名:正しい物質名ではありません(イオン名は物質名の一部)。
 アルミ,アンモニウム,過マンガン,シアン,
(昨年までも現れたもの)

元素名だが物質名ではない
(昨年までも現れたもの)炭素(元素名が単体名(物質名)と同じでない唯一のものです。)

 次に、どの分類にもあてはめることのできない誤答を、理由ごとにまとめて掲載します。

混合物中にしか存在し得ない成分:単独の「物質」としては存在していません。
(なし)
(昨年までも現れたもの)(なし)

複数の分野にまたがる混合物:答えるとしたら、成分ごとに分類を調べる必要があります。
(なし)
(昨年までも現れたもの)塩酸,炭水化物,


【有機物】

有機分子
アスパラギン酸,安息香酸エチル,安息香酸メチル,エテンザミド,グリチルリチン(酸),クロロナフタレン,コエンザイムQ10,コラン酸,酢酸デキサメタゾン,テトラメチルチウラムジスルフィド,乳酸,パントテン酸,プテロイルグルタミン酸(葉酸),マルチトース,ラフィノース,
(昨年まで)アスコルビン酸 ,アセトアミノフェン,イソプロピルメチルフェノール,エタノール (エチルアルコール)、エチドロン酸,(無水)カフェイン,キシリトール,(無水)クエン酸 、グリセリン 、グルコース (ブドウ糖),酢酸 、酢酸トコフェロール, ショ糖(砂糖 ,サッカロース),スクラロース,スクロース,L-フェニルアラニン、マルチトール,メタン,メチルパラベン,
 混合物: ピクノジェノール
(昨年まで)ワセリン
 集合名:アクリル酸アルキル、アフラトキシン,アミノ酸,アミン,アルキルアミンオキシド 、オルガノポリシロキサン,カロテ(チ)ノイド,コエンザイムQ(ユビキノン),パラオキシ安息香酸エステル,ビタミンD
(昨年まで)アミノ酸,エステル,カロテン,脂肪酸,ジメチルポリシロキサン( ジメチコン ),デキストリン ,ニコチン酸アミド( ナイアシン ),ビタミン(ほとんどすべて) ,ポリオキシエチレンアルキルエーテル ,ポリオキシエチレン(POE)硬化(水添)ひまし油 、ポリシロキサン,ポリソルベート,ポリフェノール 、

有機イオン性物質
グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド ,タンニン酸ベルベリン,ロキソプロフェンナトリウム(水和物),
(昨年まで)アセサルファムカリウム,安息香酸ナトリウム,塩化ベンゼトニウム,サッカリンナトリウム(水和物),ステアリン酸マグネシウム、
 混合物:オリーブオイル,ナタネ油
(昨年まで)クロルフェラニラミンマレイン酸塩,ジヒドロコデインリン酸塩,
 集合名: (なし)
(昨年まで)アルキルヒドロキシスルホベタイン、 安息香酸塩、クエン酸塩,脂肪酸ナトリウム,直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム,ラウリル硫酸塩、 、

有機高分子(有機イオン性高分子を含む)
アルギン酸,スクシノグリカン,ヘモグロビン,ポリアクリル酸ナトリウム,ポリプロピレン,
(昨年まで)アルギン酸エステル,カルボマー(カルボキシビニルポリマー),キサンタンガム,セルロース 、 デンプン,ヒアルロン酸,ヒドロキシプロピルセルロース,ポリエチレン,ポリプロピレングリコール(PPG),ポリメチルシルセスキオキサン,
集合名: セルロース分解酵素,タンパク質分解酵素,ペクチン,ポリシルセスキオキサン,
(昨年まで)コラーゲン、シリコーン(樹脂)(ケイ素樹脂)、タンパク質 ,ポリエステル ,ポリクオタニウム(-n) ,レーヨン


【無機物】

金属: 亜鉛,
(昨年まで)カリウム,カルシウム,ナトリウム,ランタン,
 混合物(合金):アマルガム, KS鋼,チタン合金,洋白,42アロイ 、
(昨年まで)黄銅(真鍮) ,コルソン合金,ジュラルミン,スチール(鋼、鋼鉄) ,ステンレススチール(ステンレス),青銅, ニクロム 、白銅、はんだ,

無機分子:単斜硫黄,
(昨年まで)アンモニア ,塩化水素 ,セレン、二酸化炭素 (ドライアイス),フッ素,
 混合物:(なし)
(昨年まで)(なし)
 集合名:ポリゲルマン、ポリスタナン,
(昨年まで)ポリシラン,

無機イオン性物質
コバルト酸リチウム,硝酸銀,
(昨年まで) 塩化アルミニウム,塩化ナトリウム(食塩) 、水酸化ナトリウム,モノフルオロリン酸ナトリウム 、
 混合物:(なし)
(昨年まで)(なし)
 集合名: ケイ酸アルミン酸マグネシウム,
(昨年まで)ケイ酸塩(シリケート) 、 炭酸塩、リン酸塩

無機高分子(イオン性物質にまたがるものを含む):酸化スズ
(昨年まで)黒鉛(グラファイト、カーボンブラック), 酸化チタン 、酸化鉄、ダイヤモンド、タルク ,二酸化ケイ素 (シリカ,無水ケイ酸)、
 混合物:(なし)
(昨年まで) エメラルド,ホウ砂 ,めのう,ルビー,
 集合名:水晶,
(昨年まで)アルミノケイ酸塩 、



分類に関する質問への回答

(Q1) 分子性物質と高分子物質の(名前での)見分け方
(A1) 高分子物質は分子量が約1万以上の物質とされています。しかし,分子性物質との間に明確な境界があるわけではありません。天然の高分子は,多糖類,蛋白質,核酸のいずれかです。これらに分類されるものは高分子物質です。合成高分子は,単量体(モノマー)の繰り返し構造(重合体)であって,分子量(重合度)に分布があります。一般に,名前の頭に「ポリ〜」がつきます(ナイロン・ビニロンなど,商品名が定着しているものは例外)。しかし,界面活性剤などに使われている「ポリオキシエチレン〜」のように重合度が小さいものは,高分子にはあてはまりませんので注意が必要です。

(Q2) 高分子物質と分子性物質の違いは? 
(A2) おもな性質の違いは次の通り。
性質
分子性物質
高分子物質
分子式
明確
組成しかわからない
分子量
小さく一定
大きく(概ね1万以上)不定
融点、沸点
低く一定
高いか不定、あるいは融解する前に分解する
水溶液(溶ける場合)
溶液
コロイド溶液